あの鐘を鳴らすのはあなた

電車内で前にいた女性のリュックの口が大きく開いてお財布が覗いている。声を掛けたが返事が無い、イヤフォンしていて気付かないらしい。前に回り込んでやっと分かってくれたが、無言で小さく頭を下げて終わり。


ほぼ100%の人がスマホを見ている。今度は座っていた男性が次の駅で慌てて降りた時にコンビニの袋を忘れて行った。いや、中にはゴミでワザと置いて行ったのか?それとも不審物の可能性は無いのか…自分の位置からは微妙に分からないし、先程の事もあり今度は静観した。周囲の人は全く気にも留めない様子で混み合う電車なのにその席だけ空いている。上を見上げれば下衆な週刊誌の広告。


狂っている。


田舎で暮らして、時々都会に出て来ると本当にオカシイと思う。しかし乗客からすればスマホを見ながらも視界に入っているであろう俺の方が不審者なんだろう。


電車を降りて向かった先はいつも自分のライブでお世話になっている鶴瀬PAO PAO 何と今夜は日本中で知らない人はいない和田アキ子がここでライブをやるのだ。ほとんど宣伝もしていないのに口コミだけで、超満員。お店はテーブルを全て取っ払っての対応だ。


テレビで見る(自分はテレビを持たないが、それでも外出先などの画面で見掛ける)彼女とは印象も違い、優しくて可愛い感じだった。PAO PAO マスターを含むバンドの音は最高!そこに往年のヒット曲が乗っかり、レイチャールズやエルビスのカヴァーも飛び出した。


御本人は「和田アキ子をこんな近くで見られる事は無いよ」「デビューして50年で一番小さな会場」「化粧を直す楽屋も無い」「今日はギャラも貰わないし闇営業では有りません」と笑いを取りながら言っていたが、とても楽しそうに見えた。


最後の曲は阿久悠&森田公一の昭和を代表する作家による“あの鐘を鳴らすのはあなた”で、来がけの電車内での光景が蘇り涙が溢れた。不審者に思われてもいい、オカシイ事はオカシイのだ。小さな鐘を鳴らした先ほどの自分を認めてもらった気がした。


胸を張って行こう。

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